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短編 「君の色」

~ 1章
ビンから覗く太陽の色は
僕のこれからのようで
とても綺麗な色ではなかった

いつも座るベンチの横にある
自動販売機
一番下の段の100円ビンの炭酸飲料
好きだからじゃない
むしろ嫌いかも知れない
いつも同じ味
変わることのない見た目

でもこれが一番しっくりくる
だからこれがいい


だから今日も・・・
あれ
売り切れだ
珍しい

ごめん
最後の一本だった?

僕の定位置からの声
こっちも珍しい
そのベンチに人が座ってるとこみるのは久しぶりだ

そうだったらしいですね


飲みかけだけどいるかい?


いや
流石にそれは


きにしなくていいんだよ
どうにも
私にこれは合わなかったらしい


彼女の差し出した
ビンはまだ宙にある
引っ込める気はないようだ

はぁ・・・
ありがたくいただきます


はい

彼女は僕に瓶をわたし
ベンチに一人分のスペースを空けた
そこにすわれと・・・・・

ん?


はぁ
しょうがない
僕は空いたスペースに腰を下ろす
受け取ったビンを半回転させ口をつける
うん
おいし・・くはないな
いつもどおりだ



美味しくなさそうに飲むね


実際美味しくないしね


あれ
好きだから買おうとしたんじゃないの?


いや
好きではないんだけどね
いつも買ってるから
なんとなくこれかなと


ふ~ん

もう一回


は?


君が普通に飲んでるから
また飲んでみたくなった


(えぇ・・・
まぁ はいよ


ありがと


彼女は何のためらいもなく口をつける


やっぱ
美味しくない


だから
おいしいとはいってないだろ


はい
返す


はいはい

僕は再び受け取ったビンを回さずに口をつけた
おいし・・・くないよな
でもいつもと違う


よし
そろそろ
帰ろうかな


僕は目線だけをそちらにむける


またね

彼女はまたベンチにスペースを空けた


あ・・・そうだ
ジュースありがと


ねぇ
今度は
違うのにしてみれば?


まぁ機会があったら・・・ね


じゃまたね


そして
珍しさは去っていった


残ったのは
ベンチのちょっとしたスペース
そして
僕と空きビン

今日のビンから覗く赤ずんだ太陽は
今までで一番好きな色だった

~ 1章 終

~二章

それから
僕用だったベンチにお客さんが増えた

いつもふたりで同じビンの炭酸を買って飲む

たまに売れきれになって
ひとつのビンを回し飲みをする

そして彼女は同じ一言

美味しくない

しってるよ


そして今日は売り切れの日だった


はい
半分


どうも
渡されたビンの中身を飲み干すと

彼女はいつもと違い ぽつりぽつりとつぶやき始めた


わたしね・・・
わからないの


わからない?
なにが?

彼女はビンを太陽の方向へかざす


わからないんだ


オレンジの光がビンを通過し広く反射する

君が見ている
この夕焼けの色も
いつも飲んでる炭酸も
そして
君の色も


僕だってわからない
色がわからないとはどういうことなのか
到底理解できなかった


いつから?


ここに来る
一年ほど前からかな
だんだん
自分のみてるものから
色が抜けてきたんだ


でも・・・・


うん
なおせる
でも
7%で失敗するんだって


でも


うん93%は成功する
でも
私は
その7%が怖い
君の色を見ようとするよりも
私は
君自身が見えなくなることを恐れてしまう
一日一日が過ぎるにつれて
どんどん
怖くなっていく
君がいなくなるのが怖い
怖いよ
でも
いつかの君は言ってたね
ビンから覗く太陽はとても綺麗な色をしている
そのときの君は
とても輝いてた
とても綺麗な色に見えた気がしたんだ
だから
私も見てみたい
ビンから見える太陽
君の見ているものを
そして
君自身も
残り飲んでくれるかい?
いつまでたっても合わないようだ


差し出されたビンを受け取ると
彼女は席を立った
僕はそれに口をつけ

ねぇ
これさ
美味しくないけど
僕は好きだよ
なんの根拠とかないけど
ここにいる君は
とても綺麗に見える
だから
また
同じ場所で
同じ時間に
ふたりで
たまに売り切れる
これを飲もう


うん
きっと

~二章   終

~最終

あの話をした次の日
僕を待っていたのは
彼女ではなく

一つ売れ切れランプがついている自販機と
誰も座ってないベンチ
そしてそこにぽつんと置いてある
飲みかけの炭酸ビン

僕はそれを回さずに口をつける

美味しくなるかなと思ったけど
やっぱ
美味しくないな

それでも
そこから見る
太陽は綺麗な色をしていた
もう
六月か

その日から彼女は姿を見せなくなった
それでも僕は通い続ける
売り切れのランプが点いてることを期待して



苦手な梅雨が二回過ぎ去り
アジサイの葉に雫が残る
六月二十七日
いつもとは違い売れ切りのある自販機
そして
いつもとは違うスペースの狭いベンチ

ん~
久しぶりに飲んでみたけど
美味しくないね
やっぱり合わないようだ
ねぇ
半分飲んでくれないか?

差し出されたビンを受け取ると
僕はそのビンを回さずに口を付け

うん
おいしくない
でも
「私はこれが好きだ
「僕はこれが好きだ

~終わり
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